■ 2012年9月20日 西洋占星術が内包させている思想
この依頼は、百文字占断へのお申込みの中で行われました。
「百文字占断」は当初、解答に百文字程度を使っていたのですが、だんだん、それはタイトルになってきました。
百文字占断へのご依頼は、公開を原則としております。
ホラリーの質問は名前を出さない限りどなたによるご質問かが分からないものです。
内容がそっくりだと思われても、思い当たるその人では無いことの方が多いものです。
良く似た状況に置かれている人は案外に多いものです。
当店ではこの他に、他の占い師による電話鑑定、電話占いも受け付けております。
どのように鑑定を進めているのか、そのテクニックに迫ります。
古代のメソッドを辿っていくと、不倫の質問に対して、各占星家達がとても注意深く取り組んでいる事が分かります。
17世紀の占星家ウィリアム・リリーは、このような問題と向き合う度に、既に台頭してきつつあるモダンなものに憬れる風潮を戒めて、次のようにクリスチャン・アストロロジー297p で書きます。
"I have been enforced to be more large in delivering the opinions of the Ancients, as of some modern Practices; "
「モダンな実占の類があるので、私は古典作家たちの考え方を(キチンと)引き渡すことにおいて、より大きな実施をしいられている」
リリーの嘆きが聞こえるようであり、あまりにも判断を簡単に行い過ぎなんじゃないのと述べているようにも感じられます。このタイプの質問、「夫は浮気をしていますか?」等を取り扱うには、リリーの著したクリスチャン・アストロロジーだけではよく分からないメソッドになってしまいます。他の占星術師達の、特にリリー以前の人の意見も参考にしなくてはいけません。そうこうしているうちに、リリーがきちんと意見を述べていることを再発見します。
不倫をしていないのに「している」と答えてしまうのも問題ですし、不倫をしているのに「していない」と答えるのも、クライアントの家庭不和を一層助長してしまいかねないことだからです。
過去の文献類から、女性からの質問を探し出すのはとても難しいものです。ほとんどが男性からの質問形式となっていて、各種の判断メソッドを多少女性向きに組み立て直す必要が出てくることがあります。だからといって、それほど難しいものではありません。注意をしなくてはいけない点は、ウィリアム・リリーも、それよりも古い占星家達の意見も、男性からの質問形式となっていて、女性が浮気をしているのかを訊ねたもの、システムのプロセスの説明ばかりな点です。
例えば、男性からの質問、
「ちょっと最近可愛い子を見かけたけど、彼女は独身(処女)?」
この判断方法には、アングルとフィクスト・サインを使います。
これを女性からの質問にしても、
「心をときめかす男性がいるのですが、彼は結婚していますか?」
これには、アングルとフィクスト・サインを使うことになります。
これらの判断は、一般には、アセンダントがカレントです。しかし、この手の判断では、本来なら7ハウスに当てはめるはずの質問対象事項を、古代の占星家達も、リリーも同様に、何と、それをアセンダントにしてしまっているのです!
例えば、質問が『彼女は独身(処女)なのか?』であれば、リリーは次のように判断します。
クリスチャン・アストロロジーの312pには、次のように書かれています。
"Look if the Lord of the Ascendant and the Moon be found in fixed Signes, good Planets beholding them, then say...
"
「アセンダントのロードと月を、フィクスト・サインで見つけたならば、そして吉星がそれらが見ていれば(アスペクトやコンジャンクションやアンティッション)、、、[未婚である]」。
リリーが間違っているわけではありません。もっと古代の占星家達も同じようなステップで判断を行っているのです。
更に過去に書かれているものを参考にするわけなのですが、古代のメソッドは、不倫関係について判断では、リリーがこの手の判断で示したように、アセンダントのロードに金星が近付いているから… 等と書いている占星家は居ません。
では、アセンダントのロードや月がアングル、フィクスト・サインになかったら必ず浮気をしているのでしょうか?
もちろん違います。更に「潔白さ」を探しに行かなくてはいけません。
まず、リリー以前の占星家も同じように、このような質問の場合に何かが引き金になって、アセンダントに本来7ハウスであるはずの質問対象事項を持ってきている事を見てみます。その何かを説明しないと前に行けないのですが、しっくりとした説明が今のところできません。「ウェイト(重み)」、「存在義」でしょうか。今は、こう答えるしかないのです。
ザエルも同じ用法を使っていますけれども、下記はボナタス(13世紀)のものからです。出典は、Bonatti on Horary, Benjamin Dykes 訳、441pから。
女性からの質問であれば、アセンダントのロードや月がアングルでフィクスト・サインならば、夫、あるいは恋人の身元は固いことになります。不倫関係の判断で、一番ふしだらなのがミュータブル・サインとなります。カーディナルはその中間ですが、その中でアスペクトがあれば、誘惑を受けている最中である事を示します。アスペクトがセパレートなら事なきを得ますが、アプローチであれば事実関係を作るのは、時間の問題です。
ハウスでは、アングルは良しとします。ケーダントは、下心ありです。サクシダントは中間です。サインと同じように、アスペクトも観察しなくてはいけません。私が取り組もうとしているチャートは、アセンダントのロードが、アングルに入っているミューダブルサインのものです。
私たちが検討しなくてはいけないチャートは、アングルが全てミュータブル・サインです。ここで、とても疑いが増してしまいます。が、本当に彼は浮気をしているのでしょうか?
金星がアスペクトをしに近付いて来ています。確かにフィクスト・サインなのですが、最も厄介な6ハウス(相手にとっての自己堕落のハウス)からの誘惑です。
そして、次のプロセスに入ります。
7ハウスを浮気をしているかもしれない夫に戻します。
妻に言い寄る男性はよもや金星では示されますまい。でも、男性に言い寄る惑星なら金星でも構いません。リリーの言うのは、こういう部分を差し替えて読めということです。
浮気相手の女性は、土星や水星や、木星で示される事もあります。太陽は男性のナチュラル・ルーラーです。から、7ハウスのロードが太陽から近づかれていても、それは浮気相手ではないでしょう。
歴代の占星家達の書いたものを読み進めると、夫が非常に疑わしい状況にありながら、本当に浮気をしているのかどうかが分からない。じゃあ、どうすればいいのか?
上記のチャートもそうです。
更に深く判断する方法は? 今度は、7ハウスのロードと月に注目します。そうなのです。私達はここまで観察するために、だんだんと別のメソッドに見えるような手順を使うことになっているのです。
リリーは7ハウスの恋愛の判断で、金星は質問者が女性なら、その質問者に与えると書き始めます。しかしながら、全てのチャートでそう取り扱っているわけではありません。クリスチャン・アストロロジーを読んでいただくと、先に書いた2つの恋愛の例題ではそう扱っていませんし、歴代の占星家達もそうしてきました。ここでは金星のように、月も同様に、常に女性のクライアントのための惑星では無いということを述べたいのです。
彼は浮気をしていますか? クリスチャン・アストロロジー314pからの長い判断の概略を示します。
カレントはアセンダント、アセンダントのロード、そして月、又、これに加えて月がセパレートしている惑星をそうである表示星達とします。とは、書かれているのですが・・・ 代わって浮気をしているかもしれない配偶者は7ハウスであり、そのロード、そして、月がアプローチしに行く惑星を加えます。
ボナタスはここから先に、(トリプリシティーの)2番目のロードも、3番目のロードも観察して、そこに7ハウスのロードや月がアプローチしているなら、そして、アセンダントのロードからセパレートしているなら、かなり怪しむべき女性が彼には居ると看做しています。2番目のロードとか、3番目のロードとか、ボナタスのは難しい言い方ですね。 ここで問題にしているアセンダントのトリプリシティーのロード(火星)や2番目のロード(金星)は、トリプリシティーのロード火星からは、月がセパレートをしています。金星は、木星の力を借りて水星[7ハウスのロード]とアスペクト(コレクション)をしています。
更にリリーは、7ハウスのロードや月がどんな惑星からセパレートをしているかを観察せよと述べます。それがアセンダントのロードからセパレートしているなら、先にも書きましたが、浮気をしていると看做します。そのセパレートも、3度以上だったら、別れているとします。 7ハウスのルーラーが、ヘッドと一緒だったら(コンジャンクション)どうかというと、彼は潔白であるとします。そこに、たまたま他の惑星も在ったならば、彼は今は潔白だけれども、何かを期待している事になります。細かいですね。
1. アセンダントも月も、質問対象事項にして観察してみる。それで配偶者なり恋人の浮気が怪しまれるのであれば、どのような関係が二人の間にあるのかを深く探る為に、、、
2. アセンダントをカレントに戻し(といっても全くカレントのことを念頭に置かずに判断は進められますが)、7ハウスのロードを配偶者に、「月」を何らかの指標として扱いながらチャート全体を再度観察する。
このような手順が取られているのだと分かります。 もっと端的に、 HasShe a Lover. (C.A 316p) 「彼女には愛する人が居るか」では、7ハウスに入っている惑星の持つ性質が、恋人の性質なんだと言い切ります。恋愛の質問で、7ハウスに惑星が入っていたら、全部、浮気な奴だと早とちりをしないで頂きたいのです。ここまでで手順を追って、配偶者又は恋人の浮気を探ってきました。その上での観察です。いきなり7ハウスの中の惑星を観察しに行くわけではないのです。
それは、7ハウスの惑星以外で入っている惑星を観察します。7ハウスのロードがボイドだったら、彼女は恋人を持ちません。
ドラゴン・ヘッドとコンジャンクションしていても、恋人を持ちません。
火星が一番くせものです。恋人がいます(7ハウスのロードが火星なら違います)。
土星なら、恋人は居るけれども寝ていない。
木星なら、恋人と呼べるような特定の人は居ないが、大勢の男友達がいる。
金星なら、それは淫らな話をしているけれども、行為まではしていない。
水星なら、過去に持っていた可能性はあるけれども、今は居ない。
月なら、今は居ないけれども、未来には必ず持とうとする。
太陽なら、貞節である。
ヘッドなら、貞節である。
テイルなら、先に契約愛人だと書いています。
これら、述べてある事柄をこのチャートに照らし合わせて考慮すると、
1.アセンダントのロード(木星)を(夫や恋人として)考慮する段階では、近づいてくる(金星)女性の影があります。この金星で示された女性は、本当に今、現在、浮気をしている女性なのかを確かめなくてはいけません。
2.そこで、カレントをアセンダントに、7ハウスを夫に戻します。 太陽が7ハウスにあることから、夫は潔白であることが分かります。しかしながら、それ(太陽)はしばらくしてサインを変えます。そこで、金星とミューチャル・リセプションを完成させます。 又、ボナタスの言うような、アセンダントの2番目のロード(イグザルテーションのロード=ここでは金星)と7ハウスのロードである水星がコレクションされて関係を持ちます。
時期表示として、水星と木星の間は日数として11日。しかし、金星の木星までの間は月数です。1度ですから、1カ月。
このチャートで示された夫は、怪しい動きを沢山示していながら、決定打がありません。太陽が7ハウスに入っている事、金星が身持ちの良い惑星であること。月がヘッドとコンジャンクションすること等々です。
でも、誘いを受けていて、そろそろ浮気の虫が動き出すのも時間の問題だと考えられます。それは、太陽が7ハウスのカスプの刺さっている部分、?のサインを抜けるからです。まだ浮気をしていません。が、やがて、(太陽27度、天秤に抜けるのに)3度、3週間後に、浮気を決行しそうな雰囲気です。
でも、まだ、できません。 実際に事が運ばれるのは1カ月後でしょう。アセンダントのロードはデトリメントながら、意思の強そうな4ハウスのカスプにジャスト・オンです。二度トライ(ダブル・ボディーズ・サイン)して、決行したい気持ちを持ちます。
阻止すべきか?
阻止してください。充分可能です。
もっと詳しくは、
一般の書店ではお求めになれません。三省堂、又はAmazon でお申込み下さい。
2014年4月29日(火曜日)
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